かわりゆく梅小路 (2) 息づく証拠

秋旅の調査をちまちま進める中で、たまに「過去の旅行の失敗談」が話題に上ることがある。今のところ「チーズだと思って買ったらバターだった」に勝てるものがない。いや勝たなくていいんだけど。
さて本日も引き続き、梅小路で SL を愛でる会から。

それぞれ目についたところから機関車を観て回っていたところ、旦那さんがコレは見どころだと教えてくれたので、ある1両をじっくり観てみることにした。

C56 160 号機。

こう言うと怒られそうだが、梅小路に来るといつでも SL が大量に並んでいるので、逆に見せ場が判りづらいことがある。が、コレは確かにひと味違っていた。

まず車両本体ではなく、足元に目立つものがある。

どうやら、油が垂れるので吸い取る紙を置いているようだ。退役して久しいものからは油は垂れない。つまり、現役である証左が油、ということになる。

実際、部品のあちこちが鈍く輝いていた。引退機の落ち着いたしっとり感とは異なる、どこかギラギラした色合い。

ものによっては自分が写り込みそうなほど。リボン運動のような形で差し込まれた針金もピカピカ。

戦前からずっと第一線で生き抜いてきた、古豪のパワーを感じる。

おもしろかったのが、伝統の重みだけではなかったこと。

なんと最後尾にバックモニター装備。自動車か。

さらに電源コンセントまで。時代を越えて使われるというのは、時代に合わせた変化を受け入れることでもある。

それでも、運転台に座る人の心持ちはきっと今も昔も変わらない。

ただし、当機に関しては、北びわこ号ややまぐち号の任務をいずれ解かれる見込みらしい。それが現役引退を意味するのなら、この日我々が観たのは、最晩年へ向けての綿密な点検を済ませた状態だったのかもしれない。

いずれにせよ、動態保存と静態保存の明らかな違いを目の当たりにしたひととき。

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