みやこの空梅雨に (3) 漆黒への挑戦・後編

こんなタイトルつけるから大雨になるんやろか。
さて梅小路の続き。今回痛感したのが、被写体としての SL の難易度の高さ。まっくろな物体を写真として魅力ある絵に仕上げるのは、ステンレス電車や新幹線と勝手が違ってやたら難しい。その苦労の跡を、ここでどばっと出しちゃってるわけだが。


やや暗い庫内で先頭側だけ光が当たり、プレートを鈍く浮かび上がらせる。一番目立つ場所に堂々と構える四角い板は、なんだか誇らしげ。

菊の御紋は真正面に、麗しの鳥の姿は横顔に。

運転台に入ることができるいくつかの車両では、実際座ってみたりもした。

ずらりと並ぶ計器。バルブの取っ手が、なんだか星のよう。

しかし、この窓の小ささ。とてもじゃないが、前方の見通しなんぞあったものではない。展望の良すぎる新快速に慣れている西日本の人間にとって、これで運転できるのはある種の驚異。まぁレールに沿って走るだけではあるが、この見えなさはなんとも。


現代の電車の車輪とはまったく違う、複雑な機構に見入っていると、音楽が鳴り響いた。閉館まで残り15分を告げるものだった。早いな。もともと入場が16時ちょい前やったから、当然ではあるが。

土曜とはいえ、この時間になると人はまばら。早くから来ていた人たちは、スチーム号の撤収を観て帰ったのだろう。

いつの間にか黒く変わった細い煙が、空に溶ける。昼寝する221の向こうを、300が駆け抜けていく。転車台の周りを、いろんな時代が囲んでいる光景。

桂川からとんぼ帰りじゃもったいないと、軽い気持ちで寄った梅小路。でも、1時間じゃ全然回り切れなかったな。奥にあったっぽい展示も観れてないし。

車庫の内側を、オレンジの色みを帯び始めた夕日が照らす。

静かにたたずむ横顔をしばし眺めて、車庫を後にした。

資料館の片隅で企画展示を一瞬のぞいたら、もう閉館時刻。じっくり観れなかったその企画、東海道本線の資料展は、せめてと思ってパンフだけもらって、帰りの快速で読んだ。

この資料館自体も、レトロでいい感じやね。

解説を探すまでもなく、「旧二条駅舎」の5文字が歴史を物語っていた。ここへ増設する形になると言われている西版てっぱく計画が実現しても、この建物は引き続き大事に使ってほしいな。

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