Report – 宝塚歌劇団雪組公演『CITY HUNTER』『Fire Fever!』@ 宝塚大劇場 / 2021.08.26

阪急沿線民をやっていると、電車に乗れば歌劇の広告。その点では身近だけど、実際の舞台には触れる機会なし。そんなど素人夫婦が思い切って突撃してきたので、初心者まるだしネタバレ少々の感想を置いておく。このカテゴリになってんのはまあ、自分がそういう観点ですんで。
にしても、ここ数年でシティーハンターの新作何本も観てるの不思議よな。令和っすよ。

もくじ

人生初宝塚までの道

大学時代、舞台芸術に関するゼミで、教授が熱弁していた。
「宝塚は一度行っておけ。好みもあるから二度行けとは言わん。一度でいいから行くべき」
学生さんには金がなく、在学中にそれが叶うことはなかった。大人になってもなかなか踏み切れず、興味はあったものの機会がないままだった。旦那さんは「るろうに剣心」を見逃したことを今も残念がっている。わかる。
で、今般の演目。未体験のジャンルだからこそ、原作に馴染みがあれば敷居も下がる。今度こそ観るしか。先行予約は玉砕したものの、平日ど真ん中の一般枠でなんとか S 席の確保に成功。もちろん(?)仕事は揃って休み。

昨今の事情による厳戒態勢

勢いでポチったのが7月下旬。その後2度ほど、公式からメールが届いた。宣言を踏まえて自主的に観劇を見合わせる人には、チケ代の払い戻しを受け付けるという内容。さらにお盆明け、宣言延長を踏まえて残り公演の前売券を販売終了。
平時なら「幕間に座席で軽食可能」という長丁場ならではの慣習があるらしいが、これも禁止。館内飲食店も全面休業。つまり、11時公演の鑑賞にはお食事タイミングの調整が必須。会場入り前にミスドで小腹を埋め、幕間は改札(ロビー手前で入場券を見せる入口)外にて持参のお茶を、そして終演後に台湾めし。宝塚駅前の商業施設・ソリオが大いに役立った。

はじめての大劇場


花のみちを歩いて到着すると、記念撮影用としか思えない巨大ポスター(等身大以上)がお出迎え。

観劇以外で界隈を歩いたことはあるものの、まずゲートより内側に入ったの自体が初ですし。

建物に入ると、広い通路の両側にグッズショップなどが並び、左奥にチケットカウンター、正面へずっと進めば改札。入場前にショップを覗き、羽根をしょったリラックマに驚愕。神戸方面の著名洋菓子ブランドがこぞってコラボ商品を並べていた。

外には広いテラスもあり、幕間の休憩によさげ(ただし当日は残暑まっしぐら)。

ではいよいよ場内へ。改札にてスマホの QR コードを提示、2人同時発券からの即入場。

おぉ、これがかの有名な正面階段。ちなみにこの真裏が巨大な女子トイレで、幕間に寄ったら長蛇の列ながらどんどん進んで意外と早く出てこれた。そこだけで個室数60は伊達じゃない。

2階席へと向かう動線上から見下ろすこともできる。空間自体に華やぎが漂っている。

階段のかたわらには、劇中のオリジナル曲を自動演奏するピアノ。

我々の着席位置は、S 席としては最後方の2階前半。

キャパは 2,500 人ちょいとのことで、過去に音楽ライブなどで訪れた大きめのホールと似た規模感。思ったより観やすそう。銀橋(オーケストラピット手前の通路)もだいたい見える。なお、緞帳は用途別に3枚あるようで、開演前・休憩中・終演後で柄とスポンサーが異なっていた。

本編感想

CITY HUNTER

想定より遥かにちゃんとシティーハンターだった。世に言う「ラーメンを頼んだらラーメンが出てきた」そのもので、アニメ派の多くが期待するであろう要素をぎゅうぎゅうに詰めた90分。開演直前の時点で「原作めっちゃ研究してそう感」を覚えたのは正しかった。

みんなスマホで撮ってた。開演前なら撮っていいらしい。感想書くのに使いやすくてありがたい。

音楽

個人的に特筆すべきはなんといっても Get Wild と Still Love Her。先生ヲタとしては当然すぎるムーブですね。
今公演から男役トップに就任された彩風咲奈さんによるソロで、いずれも劇中のいいところでワンコーラスしっかり歌っていただきまして。げわいに関してはイントロと1番、それぞれ違う箇所でインストとしても使ってて歓喜。Still は劇中歌としての使いどころの解釈が正しすぎてびっくりした。
地味に驚いたのが、アレンジがかなり原曲に忠実だったこと。オーケストラの生演奏というので、ベストテンの楽団みたいに原曲と似ても似つかぬ謎編曲を覚悟していたんだが、まったくそんなことはなかった。どうやら楽器編成にシンセも含まれているようだ。

原作絡みではほかにも「愛よ消えないで」が、同じく新任娘役トップの朝月希和さんとデュエットで。書き下ろしのテーマソング以外では、どことなく 80’s ポップスを感じさせる節回しの曲もあった。

物語

レギュラーメンバーは揃って登場。おなじみの 100t ハンマーもたびたび登場。獠ちゃんも香も想像以上にそのもので、あと海坊主がめっちゃ海坊主やった。槇村兄の位置付けは、込み入った筋を整頓する効果が高くてナイス。

人物以外で目を引いたのが、随所にちりばめられた昭和ネタとメタネタ。原作の雰囲気を最大限出すために、物語の舞台をあえて 1989 年に置いたと思われ、数々の小ネタが時代感を浮き彫りに。
マイシティならぬ「YOUR CITY」の大型ビジョンには、現実世界で89年に公演していたベルばらの広告、CH の舞台化告知(「32年後」の)などなど。かわいい女子の例えが宮沢りえと後藤久美子、ダンディの例えは鶴田浩二や高倉健(それは当時でもやや古いのでは…)。新宿の母に似た占い師「新宿の婆」が繰り出す決め台詞「こんなん出ましたけど」の元ネタが、戦前のジェンヌさんだというのはあとで調べて知った。
そんな中、1ヶ所だけバリバリの現代ネタ「安心安全」が逆に目立つ。

舞台装置

メインステージのど真ん中に回り舞台(盆)が仕込まれており、盆や花道に上下機構(せり)が複数。上下具合と表裏の使い分けにより、海坊主の店や小高い丘、敵方のアジトなど、さまざまな場面に対応。花道や銀橋で話を回しつつ、盆のセットへスムーズに転換、完全暗転がほとんどないのが素晴らしい。倒れた登場人物を床下に回収する仕組みはうまいなぁ。
また天井からの吊り物も多く、新宿の繁華街など雰囲気づくりに効果大。ライトや幕の合間にどんだけ吊ってるのか。等々、ハードウェア面にたいへん興味が湧いてきた。休演中でいいからバックヤードツアーしてくんないかな。

Fire Fever!

歌詞以外の台詞ほぼなし、ダンス多めで繰り広げられるショー。自分も含めて未経験の民が事前に想像する「宝塚」は多分こっちだったのね。

密林から都会、中世から現代と、さまざまなテイストの場面が繰り広げられる。
とにかく圧倒されたのは大人数でのダンスと歌。そもそも身体能力のアベレージが鬼のように高いわけで、人数が多ければ多い分だけ、統一フォーメーションの熱量が際立つ。そこへ歌の厚みが重なり、言葉も出なくてひたすら見入ってしまう。左右の花道まで埋め尽くす、可視範囲いっぱいに並んだラインダンスも、いかにも宝塚らしい隊形で壮大。

レビューで一番楽しみにしていたのは、いうまでもなく大階段と羽根。階段1段の幅は 23cm、トップの羽根の重さは 20kg、というのは以前に何かの媒体で耳にしていた。では実際どうなのか。
奥からせり出してきた階段を、次々と降りてくるスターの皆様。そもそも階段って降りるだけじゃなくて途中の段で踊るのにも使うんやね。
そして終盤、朝月さんや、男役二番手・朝美絢さんが羽根姿で登場したのち、満を持して彩風さんが階段へ。ひときわ大きな羽根、めっちゃボリューミー。その装備で歌いながらお辞儀できるもんなんすか。てか、着替え以外ほぼ出ずっぱりやん? 体力どうなってるん?
トップスターというポジションが、あらゆる面でハイスペックを求められる役割であることを、フィナーレ姿に改めて実感。

総評

「一度でいいから行け」との教授の言葉をかみしめている。宝塚、できればみんな一度は観るべき。
とはいえ、まったく馴染みのない演目に一見さんが挑むのもしんどいので、当家としては「物語把握にカロリー使わなくてすむ作品」を選んで正解だったのも確か。開演前にプログラム買って筋を把握するのもひとつの手だけど、1,000 円にしてはかなりの読み応えで、帰ってじっくり読む方が頭に入りそう。

ありがたかったのは常連さんの無言のレクチャー。銀橋に出てきたとき、ダンスでリフトなどを決めたときなど、随所で拍手。テーマソングでの手拍子。それはつまり「拍手タイミングのお作法」が周囲から自動的にわかるわけでして。
あと、装備は羽織り物とかオペラグラスとか持ってったんだけど、荷物を膝の上に置いてる分にはそこまで寒くなく(旦那さんは長袖ワイシャツで正解との感想)、オペラグラスを構える暇もなく全体をガン見するだけで十二分に楽しかった。まあ音楽ライブでもステージ全体で観てることが多いし。

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