欧羅巴円舞曲 II ウィーンの香り (22) Österreichische Postsparkasse
17 Sep 2018
ながーい音楽番組が本日あるようで。昔は3時間くらいまでなら全然観れたんだけど、もう無理やね。つーか10時間とか12時間とかになると、自分が観たい部分の割合が低くて。それ以前に「今の音楽」に興味が薄れつつある方が根本的にアレなんすけど。
さて欧州旅7日め、非鉄散歩はもうちょい続く。
重厚かつ硬派そうな外観だが、それもそのはず、こちらは郵便貯金局。ゆうちょ銀行みたいなもんか(日本同様に民営化されてるし)。で、設計者は毎度おなじみオットー・ワーグナーさん。比較的晩年に作られ、貯金の安全性を象徴する意図に基づいたいかにも堅牢そうなデザインは、各駅舎などの他作品とはちょっと違った印象を受ける。
では早速正面から失礼しまーす。
入ってすぐに階段。その両脇には、この建物の歴史を物語る手がかりが記されている。当時在位していた、これまた毎度おなじみフランツ・ヨーゼフ1世。そして建築家の名が並ぶ。
貯金局のサービス自体は 1883 年1月から行われており、業務が軌道に乗った結果手狭になった建物を、立地も新たに建てたのがここ。以来、功績のあった人々と思われる名がずらり列記されている。
階段を上がると、扉の先で広い空間が出迎えてくれる。
中央ホール最大の特徴はガラス張りの天井。自然光を最大限に取り入れ、建物内としては破格の明るさを確保。100年以上前のセンスとはにわかに信じがたい、現代でも充分通用する美しさを保っている。
金融機関に求められる堅実さを演出する、均整のとれたシンメトリー。ただ眺めているだけでも飽きないね。
さらに床もまたガラスブロックが敷き詰められ、階下(業務用の部屋がある模様)にまで光を届ける。
芸術性と実用性の驚くべきバランス感覚、それこそがワーグナー建築の真骨頂というべきもの、という論評にも納得。彼の代表作のひとつでもあり、また分離派時代の建築作品としても知られるだけのことはある。
見たところ窓口に係員は誰もおらず、銀行として営業している感はほとんどない。たまたま営業時間外だったのか、それとも見学用の空間として公開されているのか。
ともかく、日付と時刻は正確なものを示していた。
ちなみにホール外周に立っている謎の柱は、通気口であると同時に暖房器具でもあるらしい。21世紀の我々が観てもどことなく未来を感じる不思議なアイテム。
なお旦那さんは、窓口の数字表示エリアに「ニキシー管」が使われてることに食いついていた。現在のデジタル数字表示が生まれる前の、数字1文字ごとに管を用意しといて光らせる方式。へぇ。
奥の部屋はちょっとしたミュージアムになっており、ワーグナーの功績や設計図などが展示されていた。残念ながら我々にわかるドイツ語の範囲を大幅に超えていたため、ざっくり眺めた程度ではあるが。
そのさらに奥へ進むと、もっと前の時代に使われていたと思われる窓口のバックヤード側に出た。コンピュータ処理のない時代の銀行窓口は意外にも簡素で、そして仕切りは厳重。
かつて多くの人が行列を成したであろう光景に思いを馳せつつ、見学を終えて正面口から退出した。
なお、こちらを訪問する際には Julius-Raab-Platz 電停が最寄りとなる。当初うっかり通過して1電停引き返したのは秘密。
貯金局とはリングを挟んだ対岸にある、かつての陸軍省(現在は複数省庁が使用中)もなかなか重厚な外観で見応えあるね。
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