こだまする未来の手前で (3) 塔の下の7人

ファイナルお見送りシリーズはここから最終日に突入。ちなみに、これが終わったら思い出シリーズ開始予定。多分また長くなるよ、わたしのことだから。

前夜の帰り道。自宅付近で見上げた空に、厚い雲。あれが今から首都をめざすのだろうかと、東でお迎えするであろう皆様をふと案じた。
そして、その時観た雲は本当に東へ行ってしまったのかもしれない。

新快速で眠りながら着いた、朝の米原。この後ツアー客が来るであろうホームに背を向け、小さな電車で1駅。空は、そこだけ穴でも開けたように晴れていた。
フジテック前。
これまで何度となく来た場所だった。LCX の支柱にやられたり、遅れていた N にかぶられたり、とにかく一度たりとも成功したことのない、まさに鬼門。だからこそ来た。得意だろうが苦手だろうが、狙いに来ることはもうできないから。

位置を決めようと、ふらりと歩いていたその時だった。
水路を挟んだ背後から、年配の同業さんの声。そこで撮るならそれに合わせて位置を決めるから動かないでね、と。
わたしはうかつだった。すぐに返事をすべきと考えて、即答する方を選んでしまった。自分の方が前にいる以上、しっかり構図を決めてから答えても良かったはずなのに。ひとりだと極端なまでに小心者になってしまう悪い癖が、最後の最後で出ようとは。
そう気づいた時には遅かった。10分前ののぞみでファインダーを覗いて、ここでは駄目だと判る頃には、後ろの人はもう場所を決めていたから。

青い空が、悔しいほどに眩しかった。

…思ったより酷くないって? いやいや。塔の不自然さはさすがに隠せん。やれば出来るけどずるいからやめた。
えぇ、ワイド端で横向きに撮ったものを縦トリミングしましたから。本当は4号車で、ぶちっと切れてしまったので…。結局ここでは最初から最後まで徒労に終わったよ。しくしくしく。

残念だったね…。僕は頑張って東京に行ってくるから、また帰りによろしくね。ほくろを付けた 6A は、爽やかに走り去った。

W1 通過と前後して、西からは虎さんが W8 の回送を見かけたとの情報が入り、東からは Wisteria さんが仕事先から直行して配置に付いたとのお知らせが入った。
戦いに挑んでいるのはわたしひとりじゃない。馴染みの皆様も、いやそれどころか全国にきっと何千もの人々が、最後を見届けようとしている。へこんでいる暇はない。最後の1本にすべてを賭けよう。

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