Review – 都戸利津 : 環状白馬線 車掌の英さん / 2009.01.19

マモーのチケがもう来たとか、こないだ買った CD とか昨日買った別の CD とか、そういう話を考えてたが、予定変更。あまりに良かったので真っ先に書かずにいられない。
知らない人には何のこっちゃだと思うので一応書いとくと、これは漫画です。おそらくこのタイトルの時点で、常連さんには買った理由が若干筒抜けかとは思うが、でもそれだけじゃないよ。

まずビジュアル的に驚いたのが、電車を含めて本当にありそうな、異国情緒満点な街の風景。1話の後書きに、メルボルンを参考にしたとあって納得。現地に行きたくなった。
だが実在モデルがあるのを考慮しても、電車まわりの描写がおっそろしく丁寧。客室内はともかく、沿線の信号(多分)や車庫、さらにはドア扱いのスイッチまで出てくる少女漫画なんぞ初めて観たわ。もしや同業さん…あ、いや、これで「主人公が車掌」という設定が一層リアルになったのは確かやな。

ただ、この作品の真の魅力は他にある。
そっけないのに照れ屋で気が利く、英さんの人物像。ふとしたきっかけで変わってゆく乗客たちの進路。思わず頬が緩み心があったかくなる結末。
そして一番感動したのが、絵の描写以上に緻密に計算されたストーリー。各話の出だしと終わり、さらには1話の最初と3話のラスト、そして人々の立ち位置。それがパズルのピース、いや環状線のように見事繋がった瞬間の、この気持ち良さといったらもう!
あと、なにげに読み得だったのが巻末の描き下ろし「特別運行」。本編の後日談あり、ちょっとずれた英さんの行動の種明かしあり。後者はまじで笑った。

実は数週ほど、買いたいけどどうしよーって迷っとってん。3話を立ち読んだのが猛烈によくて、先月(多分発売直後)に店頭で見かけて迷って、それで一瞬きっかけを逸していたのだが。木曜に新作を立ち読んだらこれがまた猛烈によかったので、その勢いで買ったという次第。
通常の花とゆめコミックスより微妙に高いし、装丁も世界観に合わせて特製なので探しづらいことこの上ないが、これは装丁変えた人グッジョブと言わざるを得ない。
なんかね、人も街も「生きてる」って感じがした。買ってよかった。何度も繰り返して読めそう。ていうか、都戸さん自体が買いだわ。鉄ヲタか否かを問わずに是非おすすめしたい。とりあえず試し読みページを貼っておく。

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