西の聖地は招くよ (9) 惜別のとき

紅葉を背負って走る姿を撮りたい。スプリンクラーを浴びて(以下略)。気が早いと言われようと、そういう計画を練る時間が欲しい昨今。
さて、博総ネタも佳境にさしかかってまいりました。場内でのラストスパートを一気に。

それにしても、さっぱり V が来ない。しびれを切らし、ちょっと南駅に近い側を観に行ってみることに。すたすた歩いていると、予想外のものが。

こ、これはもしや。

もはや疑いようもなかった。節目節目に作られた0系の鼻たちが大集合。もっと派手に展示してもらえれば良かったのにね、とは思ったけど、見える所に置いてくれただけでもありがたい。初めて観るものもあったし。

JR 発足時はバリバリ現役やってんなぁ。昭和は遠くなりにけり。


ほどなく、車両たちの寝床を近くで一望できるエリアに到着。去年はこっちの方まで来る余力がなかったんよな。
と、その時。居並ぶ車両たちの間に見えたもの。…それは他でもなく、これからこだまを担当する V が博多へ向かって去っていく後ろ姿であった。はい、これで開場中に V の洗車が観れる可能性が消えましたっと。しくしくしく。

再び車庫へ通じる線路に目を転じる。さっきから皆気になっていた、博多方4両だけ切り身にされて寝ている、ぴかぴかの B 編成に。屋根上と床下のこの綺麗さは異常。

で、何故ここに。と談義していると、虎さんが中の人にすかさず質問。B15 は全検の真っ最中で、これは検査終了した分。車庫にさくらを入れるためこうして屋外に疎開しており、他には4両がジャッキアップ実演に使われているとのことだった。

時々見かける「全検明け」を遥かに越える、車両所だからこその本物の洗いたての美しさに、しばし見とれた。


一喜一憂するわたしたちを尻目に、W1 は車庫に頭をつっこんで静かにたたずんでいる。前日は団臨(多分)で走り、この日は多くの人に愛でられて。大活躍やね。果たして来年は、W1 としての姿で会えるのだろうか。

周囲の木の葉は、既に暖色をまとい始めていた。季節は進む。500系のぞみのいない春に向かって。

この日の雑談の合間には、ひそかに抱えていた不安もちらり。例のごたごたで博総公開が中止されたらどうしようと、気をもんでいたのはわたしだけじゃなかった。洗車待ちでふと見上げた視線の先に、青字の JR 社旗が半旗になっているのが見えても、口に出すのをためらう瞬間が確かにあった。
思い通りに行かないことはたくさんある。それでも、今日ここに来れたことに対する感謝は尽きない。JR にも、そして皆様にも。


さっきから蛍の光が鳴り響いている。並んだ1号車たちも西日に照らされる。気づかぬうちに、既に閉場の16時を迎えていた。

来年も無事開催されたなら、こんな感じで泡のビフォーアフターな V が観れますように。そう祈りつつ、W1 の前にいらした namasute さんたちに一礼し、わたしたち3人は博総を後にした。

南線の臨時はお得な E の担当。勿論、シートの広い号車を選ぶ。席を向かい合わせにして、気分は遠足。
博総出口でわたしが羨ましがっていたからか、お二方がシールをくださった。板付の方角を眺めたりするうちに、10分の旅は瞬く間に終了。それぞれに帰り道へ向かうお二方と、再会を期しつつお別れのご挨拶を交わして、わたしはコインロッカーへ走った。この旅最後の目的を果たすために。

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