実録・おひとり様物語 接近編 (5) はじまりの場所

帰ってからずっと HDD レコーダーの中が気になって仕方ないのだが、ちょこちょこ観ていけばまぁ追いつくだろうと。それを観る前にとりあえず、月曜のまとめというか、エピローグ的なものをひとつ。

宿提供の朝食はパンと飲み物だけとはいえ、食べないよりはよかろうと、食べるつもりで掛けた8:30のアラームは、眠気の前に2つとも陥落した。
ふと意識が戻ったのは、チェックアウト20分前。まっく以外の荷物詰めと、着替えセットの準備を、昨夜のうちに済ませておいたから間に合ったようなもので。

やけに重く感じるキャリーバッグを引きずって、すっかり世話になった歩道橋を進めば、次々と通り過ぎる各線。線路を渡りきると、通路は右へ折れ、駅へと続く。
その角の片隅に、線路西側へ下りる階段がある。
さらに進んで改札近くにある、うず潮、という寿司屋に、やけに覚えがあった。到着してからずっと理由を一生懸命考えていた。あの階段が思い出させた。
ここはかつての通り道。

そして今。時間つぶしを検討して、思い当たったのが貿易センタービル。南口改札とモノレールを無視して行けば着くはず。これまた見覚えのある金券ショップの横を抜け、矢印に従って左折。
そこに広がっていたのは、記憶のかけらの集合体だった。


この空間へ来るために、たびたび昇った階段。

奥の ATM で、何人ものお偉いさんに宛てて振込作業に通った道。

そのついでに、煮詰まった頭と気分をせめてほぐそうと立ち寄った本屋。

すべてがほぼあの頃のまま。
大学を出て最初に入り、1年で飛び出した会社にいた頃の。

その後その会社は、わたしのいた部が分社化したり再合併されたり、会社全体が他社に吸収されたりと、波乱の道を歩んでいるらしい。
だからじゃないけど、あの選択は正しかったと今でも思う。部内で誰ひとりコードを書かないソフトハウスで事務作業に埋没するより、苦労が多かろうとも制作開発の現場にいるほうが、わたし基準ではよほど幸せに決まっている。

時が流れ、しごとを再び探している今、ここに来れたのは、おもしろい偶然だった。どういう環境でどう働いて、どんなオフを過ごすか、自分は何を望んでいるか。それを振り返るのに、社会人として最初に歩いた浜松町ほどふさわしい場所もない。
今度こそ、素敵な環境に巡り会えますように。そうしたらもっと力を磨いて、しごと以外の時間も大事にして、悔いのない日々を過ごそう。

当時一度も寄らなかったカフェで激安モーニングをとり、本屋併設の CD 屋でタイトルを確認して、昔は通過されていた京浜東北(またしても209)で東京駅へ向かった。
「上京」が「帰京」に変わるのと、その移動手段に大好きな新幹線を選べなくなるのと、どちらが先か。いやな競争だが、今はなんだかそんな感じ。

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